“医者へ行くほどではないがどうも出が悪い”こう感じている人は意外と多いようです。小便が出にくくなるのは歳のせいだと考えていませんか? これらは前立腺が腫れてきた時の最初の症状です。はやい人は50代ぐらいから前立腺が腫れ始めます。60代以上の人では5人に1人くらいの割合で前立腺肥大があるといわれています。もちろん全員に治療が必要なわけではありません。宴会場や駅のトイレで小便をしていて隣の人に追い越されるようなら、あなたの前立腺はきっと腫れています。しかも同年齢の人に追い越されるようなら多分診察が必要でしょう。

  前立腺というのは膀胱の下にあるクルミくらいの大きさの臓器です。精液の原料となる前立腺液を作っています。前立腺液は精子に栄養を与えたり、混入してくる細菌を殺す作用があります。この前立腺の中を尿道が貫いているのです。前立腺を短い竹輪に例えると、中の穴が尿道です。竹輪の身の部分にこぶができて腫れると内腔が狭くなり尿が細くなるわけです。しかし徐々に細くなってくるために自覚症状としてはなかなか気づきません。むしろ前立腺が腫れて膀胱を下から圧迫する事による頻尿(何度もトイレに行く事)、夜間尿(夜トイレに2度も3度も起きる事)、残尿感などが最初に気づく症状としては多いようです(これらの症状を膀胱刺激症状と言います)。
 
 前立腺肥大症を放置しておいてらどうなるか。狭くなった尿道から小便をおし出すために膀胱の筋肉は頑張って収縮しています。あなたが毎日鉄アレーを上げ下げしてトレーニングしていたとすれば腕の筋肉はモリモリしてきます。それと同じように膀胱の筋肉もモリモリしてきてしまいます(肉柱膀胱といいます)。本来、膀胱はゴム風船のように柔らかく膨らんだり縮んだりすることで、小便を貯めたり出したりできるのですが、筋肉が厚くなって硬くなると古くなったゴム風船のように伸びが悪くなります。膀胱容量が減少し1回に貯まる量が少なくなるので頻尿になってきます。前立腺肥大症初期の膀胱刺激症状による頻尿はわりあい早く改善しますが、肥大症進行期の肉柱膀胱による頻尿はなかなか良くなりません。ですからそうなってしまう前に治療をはじめたほうが良いわけです。

  小便が出なくなるような状態(尿閉)を繰り返す人では手術が必要な場合もあります。しかし現在では薬が良く効くようになり手術をしなくても良い場合が増えてきました。したがって内服薬による治療が一般的です。薬は3種類に分かれます。①マイルドな前立腺縮小作用を持つ生薬系の薬 ②神経を介し尿道の筋肉を開いて小便の出口をひろげる薬 ③ホルモン作用により前立腺を小さくする薬です。治療を受ける人の年令、合併症の有無、生活スタイルなどによって決まります。

  実は、前立腺肥大症と全く同じ症状で前立腺がんという病気があります。私が小便の事をうるさく言うのは、ひとえにこういったがんの人を早く発見するためです。当院でも早めに見つかって助かった方が何人もいます。身近に出方が悪かったり、小便が近かったり、夜トイレに2回以上起きるような人の話を聞いたら“医者に行ったほうがいいかもよ”と教えてあげて下さい。ひとは事の重大さについて教えられないと意外と気がつかないものだからです。

うめやま医院 高崎市 泌尿器科