誰もが自分にはひょっとしたらビタミンが不足しているのではないかと思った事が一度はあるのではないでしょうか。今回は知っていそうで実は知らないビタミンについての話です。ビタミンは蛋白質、脂質、糖質などからエネルギーを作り出す、あるいは分解する(代謝する)作用や、身体(細胞)の機能を活発にする作用を手助けする補助物質です。脇役の脇役というわけです。ビタミンB6,ビタミンKなどわずかな例外を除いて、猿や人間は身体の中でビタミンを造る事ができません(同じ哺乳類でも犬や猫は体内でビタミンCを合成できます)。だから人は食事から毎日少しずつビタミンを摂取する事が必要です。

 ビタミンの発見のきっかけは長期の航海でした。バスコ・ダ・ガマは喜望峰廻りのインド航路発見の代償に船員の3分の2を失ったと伝えられます。今から200年前、当時のイギリス海軍の軍医が士官に比べて一般の兵隊の方に航海の途中で死んでいく者が多い事に気づきその原因は食事であると考えました。一般の兵隊は乾いたパンと塩漬け肉しか食べていなかったので病人には士官と同じようにライムやレモンを食べさせたのです。すると患者はみるみる良くなっていきました。彼等はビタミンC欠乏により壊血病にかかっていたのです。以後、一般兵にもライムやレモンが配給されるようになったのは言うまでもありません。

 現在ビタミンとして知られている物は13種類あります。脂溶性ビタミンが4種類;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKです。水溶性ビタミンが9種類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ビオチンです。かつてはビタミンF、ビタミンG、ビタミンH、ビタミンB3、ビタミンB5、....などいろいろあったのですが、後になって間違いであったり同じ物だと判明したために欠番となりました。

《ビタミンA》緑、黄、赤などの緑黄食野菜にたっぷり含まれています。ですから野菜嫌いの人はビタミンA不足に気をつけなくてはいけません。ビタミンAは眼の神経の栄養となります。不足すると暗いところでの視力が落ちたり(鳥目)、暗順応(映画館で最初見えないけれど段々見えてくるようになる現象)が悪くなります。また皮膚や粘膜などが弱くなる事も知られています。にんじんの赤はカロチンの赤ですがカロチンは身体の中でビタミンAとなります。春菊、パセリ、ほうれん草、かぼちゃなどにもたっぷりカロチンが含まれています。動物性食品ではレバー、牛乳、バター、卵黄などもビタミンAが豊富です。かつてβカロチンを少ししか摂らない人はたくさん摂る人に比べて7倍肺がんになりやすいと報告されました。それを契機に大々的な疫学調査が世界的規模で行われました。その結果、βカロチンはがん発生に関して予防効果があるという結果と、過剰なカロチンはがん発生を増やすと言う結果に分れました。脂溶性ビタミンは水溶性ビタミンに比べ体内に蓄積しますので、現状では、必要量以上の大量のビタミンを摂る事は避けた方が良さそうです。

うめやま医院 高崎市 泌尿器科