各性感染症の疾患
症状のあるうちは薬をきちんと内服していても症状がなくなると飲み忘れたり、自己判断で中止してしまう人がいます。
症状がなくなってもまだ菌は生きていますので、医師の指示どおりの期間きちんと内服してください。
淋菌感染症 【オンライン診療(自費治療)可能】
男性
尿道内で増殖し尿道炎症状を引き起こします。感染の機会があってから2~7日くらいの後に、灼熱感を伴う排尿痛、尿道口よりだらだらとした黄緑色の排膿をもって発症します。放置した場合、何日かすると自然に排尿痛や排膿が治まる場合もありますが、淋病が治癒したわけではなく尿道内にいつまでも潜伏しています。
淋菌が逆行性に精管から精巣上体にまでいくと、精巣上体炎(副睾丸炎)を併発します。精巣上体が腫脹し激しく痛み、ひどければ鶏卵サイズまで大きくなります。菌が精巣上体や前立腺から血液中に入り、38度以上の発熱、倦怠感を伴うこともあります。
精巣上体炎や精管炎を引き起こした場合、炎症により精子の通路が閉塞するので両側で起きると不妊症になる可能性があります。一般的には淋病は排尿痛や尿道からの排膿を伴いますが、どちらかだけの場合やまったく無症状のことがあります。また、発熱だけの場合もあり、風邪と間違えることがあります。この場合知らない間に相手に感染させてしまうことになります。
女性
膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。
症状としては、帯下の増加、膿様帯下、悪臭、などですが、男性に比べて女性では症状が少なく、気が付かないこともしばしば起こります。約8割の女性が無症状です。
子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が波及し、下腹痛や発熱の原因になることがあります。
卵管周囲の癒着や、卵管通過性の障害が起こり、子宮外妊娠や卵管性不妊症の原因となります。またオーラルセックスにより咽頭炎や扁桃炎の原因にもなっています。肛門性交では、直腸炎を引き起こします。
診断方法
男性:問診、採尿、尿道分泌物(膿)
女性:膣分泌物
男性、女性とも同じです。下記ののいずれか、またはその併用。
- 塩酸スペクチノマイシンの筋肉内注射
- セフォジジムなどセフェム系抗生物質の静脈内注射
- ニューキノロン系の抗菌剤の内服
- セフェム系またはペニシリン系抗生物質の内服
- テトラサイクリン系抗生物質の内服
※薬の内服期間は1~2週間とされていますが、実際にはそれでは治りきらずにもっと長期になることがあります。
クラミジア 【オンライン診療(自費治療)可能】
男性
尿道内で増殖し尿道炎症状を引き起こします。感染の機会があってから5~14日(まれに3週間)くらいの後に、尿道の痒み、違和感や軽い排尿痛を自覚します。尿道口より透明または白色の膿に気づくこともあります。症状があまり強くないので様子を見ていると2~3週間で症状が治まる場合もありますが、クラミジアが治癒したわけではなく尿道内にいつまでも潜伏しています。
クラミジアが逆行性に精管から精巣上体にまでいくと精巣上体炎(副睾丸炎)を併発します。痛みは軽度で発熱はあまりありません。睾丸全体が腫れて大きくなったように感じるときもあれば睾丸の隣にしこりを触れるといって受診する人もいます(睾丸が腫れる病気には睾丸の腫瘍もあるので注意)。
精巣上体炎や精管炎を引き起こした場合、炎症により精子の通路が閉塞するので両側で起きると不妊症(閉塞性無精子症)になる可能性があります。
クラミジアによる眼球結膜炎を起こすことがあります。症状は眼の充血、痒み、目やになどです。
一般的にクラミジア尿道炎は、淋病に比べて症状が軽いので、自分では気が付かなかったりあるいは、まったく無症状のことがあります。そのため、淋病に比べてクラミジア感染症は近年増加しています。
女性
初感染時にほとんど自覚症状がありません。9割の女性が無症状です。したがって自ら病院を受診することは稀かもしれません。
帯下の異常、性交痛、下腹部違和感など思い当たる節があれば産婦人科医師に相談したほうがよいでしょう。
女性の場合、膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。時として子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が波及します。卵管周囲炎や骨盤腹膜炎、肝臓周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)などは原因不明の腹痛の原因になっていることがあります。
卵管周囲の癒着や、卵管通過性の障害が起こると子宮外妊娠や卵管性不妊症の原因となります。
妊娠中の感染は絨毛膜炎や羊膜炎が誘発され流・早産の原因となります。妊婦がクラミジア感染のまま出産すると産道感染を引き起こし新生児に結膜炎や新生児肺炎を発症します。
女性のクラミジア感染症は男性にに比して症状が軽度であるものの合併症や後遺症が大きいので注意しなくてはいけません。
オーラルセックスにより咽頭炎や扁桃炎の原因にもなっています。しかし多くの場合、無症状です。
診断方法
男性:問診、採尿、尿道分泌物
女性:膣分泌物
男性、女性とも同じです。下記ののいずれか、またはその併用。
- テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン、ビブラマイシン等)の内服
- マクロライド系抗生物質(クラリス、クラリシッド、ジスロマック等)の内服
- ニューキノロン系の抗菌剤の内服
※薬の内服期間は1~2週間とされていますが、実際にはそれでは治りきらずにもっと長期になることがあります。
非淋菌性非クラミジア性感染症
非淋菌性尿道炎の原因はクラミジアによるものが約半分近くあり、これをクラミジア性尿道炎と呼んでいます。クラミジア以外の菌による非淋菌性尿道炎を「非淋菌性非クラミジア性尿道炎」と呼んでいます。
非淋菌性非クラミジア性尿道炎の原因としては、マイコプラズマ属やウレアプラズマ属の細菌の関与が考えられています。
男性
尿道炎症状(尿道違和感、排尿痛、排膿など)です。
女性
無症状または帯下の異常、下腹痛などです。
子宮頚管から上行性に感染し卵管周囲炎や骨盤腹膜炎などの原因になることもあります。
診断方法
男性:問診、採尿、尿道分泌物
女性:膣分泌物
男性、女性とも同じです。クラミジア感染症に準じて行います。パートナーも同時に治療します。
性器ヘルペス 【オンライン診療(自費治療)可能】
単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって起こる性器の皮膚の炎症です。
発症様式により初感染、初発、再発の3型に分類されます。
初感染(初感染初発)
性交渉などの感染の機会があってから2~7日(~21日)して性器や肛門のまわりに不快感や痒みが生じ、軽い刺激感を伴って赤い小さな水疱が群がって現れます。
水疱は自身では見逃す事も多いのですが水疱の有無、痛みが有るか無いかは問診上重要です。
男性では皮疹は 亀頭、包皮、陰茎の頚周り、その少し付け根などの皮膚にできます。
女性では外陰部(膣の入り口の周囲の皮膚)にできます。
性器の疼痛はかなり強く排尿や歩行が困難となり入院して治療することもあります。多くの場合鼠径リンパ節の腫脹と疼痛が見られます。全身症状として発熱、頭痛、倦怠感などが生じることがあります。
初発(非初感染初発)
すでに潜伏感染していたHSVが再活性化して初めて病変として出現した場合です。
抗がん剤や免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド剤などの投与時や、放射線、手術、精神的・肉体的ストレスなどを契機に出現することが知られています。
再発
潜伏感染していたHSVが再活性化し、繰り返し病状が出現することがHSV感染症の特徴です。
症状は比較的軽く1~2週以内で治癒します。病変は陰茎や外陰部の毎回同じ部位に、赤みがかった小水疱が出現します。潰瘍を作り痂皮が形成され治癒します。出現する前に病変部やその周囲のピリピリ感や違和感を前駆症状として気づく人もいます。再発しても疼痛は僅かで期間も短いのですが精神的ストレスは大きな負担になっています。
診断方法
男性・女性ともに:視診
- バラシクロビルの内服1日2回を5日間(初発型では症状により延長)
- ビダラビン軟膏の局所塗布(再発型で病変が小さく症状が軽い場合)
- アシクロビルの点滴静脈内注射(症状の強い場合)
女性の場合、痛みのため入浴もできず患部に膿や分泌物が付着して二次感染の原因になっています。
生理的濃度の食塩水(自宅で作るときは500mlのペットボトル水に家庭用塩約5gを(濃度約1%)溶解します。(参考;料理用小さじ1杯は6g)この食塩水を体温程度に暖めて患部の洗浄に使用するとしみないので良いでしょう。
尖圭コンジローマ 【オンライン診療(自費治療)可能】
人乳頭種ウイルス(HPV)が、接触によって皮膚や粘膜のの小さな傷から侵入し3週から数ヶ月の期間の後、皮膚にイボ状の突起や隆起性を作ります。放置すると少しずつ大きくなり、数も増えてきます。イボは最初は直径も高さも1~2㎜程度の大きさですが時により直径1~2cm近くになります。高さは5~10㎜程度までです。形は顆粒状、鶏冠状、うに状(殻から出した)、トゲ状、マッシュルーム状など様々です。放置しておくと数も数個から十数個に増えます。
好発部位
男性:亀頭、冠状溝、陰茎幹部、稀に陰嚢や陰茎根部の皮膚です。
女性:大陰唇、小陰唇、膣前提、会陰、膣内、子宮頚部です。
男女とも肛門周囲や、直腸内に発生することもあります。
診断方法
男性・女性ともに:視診
外科的治療と薬物療法はあります。
外科的治療:
①外科的切除:手術標本が採取できるので病理診断(組織診断)ができます。
②電気焼灼法:電気メスによって熱凝固を起こしコンジローマの治療と細胞中のウイルスの駆除を行います。
③凍結療法:液体窒素を用います。
④レーザー治療
薬物療法:
ベセルナクリーム(イミキモドと言う物質を含んだ製剤)
局所での免疫賦活作用を通じてコンジローマの疣を消失させます。
週3回(月、水、金または火、木、土)、寝る前に病変部に塗り、翌朝シャワーで洗い流します。これを4~16週病状を見ながら繰り返します。
【注意事項】
その一方で皮膚のびらん、紅斑、表皮剥離、疼痛なども起こすことがありますので、ベセルナクリームは医師の指示に従って使用してください。
膣トリコモナス感染症
男性
トリコモナスの感染により尿道炎や前立腺炎を起こしますがほとんどの人(おそらく95%以上)で無症状です。
女性
女性では帯下の増加、陰部の痒み、白色泡沫状帯が特徴です。
症状のない人も40%に見られます。時として増加したトリコモナスによって膣のデーデルライン桿菌が減ると膣は抵抗力がなくなります。そのため膣内に細菌が繁殖し時に不愉快な悪臭の強い帯下となります。また刺激性の痛みが生じることもあります。
診断方法
男性:採尿、尿道分泌物、前立腺駅
女性:膣分泌物
男性:メトロニダゾールの内服を10日間。
女性:メトロニダゾールの内服、またはメトロニダゾールの膣剤、またはその併用です。
性器カンジダ症
男性
亀頭や包皮の炎症を起こし皮膚の赤み、痛痒みなどを生じることがあります。
性的接触によって女性から陰茎皮膚にカンジダが移っても入浴やシャワーによって清潔にしているかぎり感染は稀です。
女性
膣や外陰部の痒み(特に膣入り口に強い)が特徴です。灼熱感やヨーグルト状あるいは酒粕状の白色帯下の増加があります。
カンジダは皮膚、口腔内、直腸などの常在菌です。膣内にも常在している人もいます。体力の低下、膣環境の変化、抗生物質の連用などによって膣内や外陰部で増殖し症状をおこします。したがって性感染症というより自己感染の機会の方が多いと思います。
痒くて掻いていると小さな傷をつくり、そこから細菌が入り二次感染を引き起こすと症状がさらに悪化します。
風邪をひいたりして抗生物質を長く連用した場合は、膣を守るデーデルライン桿菌が減少しカンジダが増殖しやすくなります。また、長期にわたるピル、妊娠などでは体内のホルモン環境が変化しカンジダを発症しやすくなります。
糖尿病、肥満、多汗、おむつ、ステロイドホルモンなども憎悪因子です。
診断方法
男性:視診
女性:膣分泌物
抗真菌剤の膣剤(1~2週間)と軟膏の塗布。
カンジダ菌がいても症状がなければ必ずしも治療の対象となりません。
ケジラミ
シラミは皮膚から吸血し、痒み、湿疹などを起こします。人体に寄生するシラミは、主に、ケジラミです。痒みを自覚するのは感染後1ヶ月した頃です。
ケジラミは、主に性行為により感染します。陰毛の生えている部分を中心とした痒みが主症状です。時に肛門周囲や大腿などにも及びます。
体長1.2~1.5mmでよく観察すると毛に白い点々として見つけることができます。
原則として、頭髪にはケジラミは感染しませんが、稀に幼少児や女性で頭髪に寄生することがあります。痒感を自覚するのは感染後1~2ヶ月した頃です。その程度は個人差があり、数匹で痒みを感じる人から、多数匹がいてもあまり痒みを感じない人もいます。痒みがあっても皮疹などの皮膚所見が無いのが特徴です。
診断方法
自己診断できます。陰毛が痒かったら患部をよく観察してください。虫体または卵が確認できればそれで診断となります。
男性・女性ともに:視診
シラミ駆除剤”スミスリン”を薬局で購入します。パウダータイプとシャンプータイプがあります。
パウダーの場合、患部に散布し手やブラシで隅々までいきわたるようにします。1時間後、水、石鹸等で洗い流します。この操作を1日に1回、3日に1度ずつ(2日おきに)、3~4回繰り返します。卵の時は殻に覆われ、薬の効果が浸透しないので何度かに分けて退治します。
剃毛も効果的ですが完全剃毛は不可能です。スミスリンの併用が理想的です。
【注意事項】
虫は人体から離れても48時間は生存します。まれに浴場、日帰り温泉などで感染があります。
下着、シーツ、タオルなどの共用を避け、毎日こまめに洗濯を、アイロンはより効果的です。
下着入れ、寝具、畳、床など必要と思われるところはスミスリンを散布します。布団乾燥機なども効果的があります。
HIV感染症
HIVの初感染症状は感染してから1~4週後位で、発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎症状、倦怠感、発疹、筋肉痛、関節痛、下痢、頭痛などがみられます。ちょうど風邪症状に似ています。このためHIV感染のリスクを意識していなければ普通の”感冒”として見逃され症状も自然に軽快してしまいます。この初発症状は全員にでるわけではありません。
その後の慢性感染期では初期のうちは免疫状態も保たれ何の自覚症状もありません。この時の免疫状態(HIVの進行状態)の指標がCD4陽性リンパ球数です。CD4陽性リンパ球が少なくなってくると日和見感染を併発する状態(AIDS発症)になります。
多くの人は生命を脅かすような事態になって初めて自分がHIV感染者である事実を知ります。
【母子感染】
母親から子供に妊娠中に子宮内の胎盤から、分娩時の産道を通過するとき、出産後の授乳により、感染する可能性があります。妊娠初期からHIV検査を行い感染があれば予防策を講じます。
診断方法
感染の機会があってから3ヶ月すると検査が可能となります。HIV感染症の診断は血液検査(HIV抗体)で行われます。抗体検査にはスクリーニング検査と確認検査があります。通常は最初にスクリーニング検査を行い疑いのある症例では確認検査を行います。
男性・女性ともに:血液検査
梅毒
梅毒は性行為または性行為類似の行為によって感染します。梅毒の病原体は”トレポネーマ”と言い、皮膚や粘膜の傷を通して体内に侵入し感染が成立します。先天梅毒と後天梅毒に分けられ、後天梅毒は4期に分類されます。
先天梅毒
梅毒に感染した母親から胎盤を経由して胎児に感染します。胎児が妊娠早期に感染すると死産または早産になります。出産できた場合は生後数週あるいは学童期、思春期になって内臓、歯、皮膚、中枢神経などにさまざまな病変を来たします。
先天梅毒予防ため産婦人科では妊娠早期に母体の梅毒の検査をしています。
後天梅毒
性的接触によって感染します。“3-3-3” (3週間、3ヶ月、3年)に症状が出ます。
第1期
感染から3週間たった頃、感染部位(トレパネーマ侵入部位)の皮膚あるいは粘膜に5~15mm位の硬結ができます(初期硬結と言う)。好発部位は男子では包皮、亀頭とその周辺、女性では大小陰唇とその周囲です。初期硬結(軟骨用の硬さ)は放置するとそのまま数週で自然消失する場合と、中心部に潰瘍を形成し、周囲が固く盛り上がってくる場合がります(硬性下疳と言う)。その後そ径リンパ節が無痛性に硬く腫れる事があります。
初期硬結も硬性下疳も痛くも痒くもないためにしばしば見過ごされます。またこれらの症状は放置しておくと2~3週間の間に自然に消失しますが梅毒が治ったわけではありません。トレポネーマは身体の内部に隠れて増殖します。
第2期
感染から3ヶ月たった頃、トレポネーマは血行性に全身に散布され、全身の皮膚と粘膜に梅毒病変を起こしてきます。体幹、四肢、顔面などに出現する淡紅色の発疹でその色からバラ疹と呼ばれます。バラ疹は痛くも痒くもなくやがて消退します。
その後、丘疹性梅毒疹や扁平コンジローマ(肛門周囲や外陰部、陰茎にできる扁平に隆起した腫瘤)ができることがあります。これらの症状は無治療でも消退と再発を繰り返すことがあります。
梅毒血清反応は強陽性です
第3期
感染後3年以上経過するとトレポネーマは体内に入りここで増殖しゴム腫という腫瘤を作り皮膚症状を起こしたり内臓組織を破壊します。
第4期
感染後10年以上経過すると心血管系や中枢神経系に入り、血管炎、大動脈瘤、進行性麻痺、痴呆などの症状を呈します。
ペニシリン系抗生物質を2~4週間内服します。
梅毒血清反応(STS)は治療してもなかなか低下しません。陰性化には数ヶ月~数年かかります。
STSの低下を指標にしていると抗生物質の長期投与になってしまいます。
TPHA法は一生陰性化しないので治療の目安にはなりません。