精巣(睾丸)の役目は二つあります。男性ホルモンを造ることと精子を造ることです。タマ、上品にいえば睾丸、医者は精巣と言います。魚屋さんは白子と呼びます。睾丸は胎児の頃、お腹の中でみぞおちの奥のあたりでできます。タマを打ったとき腹が痛くなるのはそのためです。タマに行く神経がみぞおちの奥から出ているからです。出来上がった睾丸は生まれる何日か前にそ径(腹と足の付け根の間)を通って陰嚢の中に降りてきます。陰嚢の中に睾丸が降りていない時“停留睾丸”と言います。探すとお腹の中かそ径にあります。睾丸が下降しないと精子を造る機能が失われてしまいます。お腹の中はふくろよりも温度が高いのが原因と言われています。普通は3~4歳くらいまでに降りてくるのですが停留したままの場合は手術で治さないといけません。ところで、正常でも右と左の睾丸の高さが違うのを知っていますか?左のほうが下にあります。陸上競技のトラックが左回りなのは関係しているという話がありますが、確かに左回りのほうが走りやすいようです。

 子供の頃にふくろがぷよぷよあるいはぱんぱんに膨らむ事があります。これは多くの場合“陰嚢水腫”と言って睾丸の周りに水が溜まった状態です。たいがいは自然に吸収されますが、ふくろが腫れて邪魔なときは針を刺して水を抜きます。

 小学生も高学年になると睾丸から男性ホルモンが大量に出るようになります。髭や陰毛が生え、ペニスが大きくなるのはこの頃です。中学生や高校生の頃、急に睾丸が腫れて大きくなり痛くなる事があります。“睾丸回転症”または“睾丸捻転”といいます。思春期の頃睾丸が急に成長するときに、ふくろの中でバランスが悪くなり、くるっと回転しだし、2回転あるいは3回転し元に戻らなくなってしまった状態です。そ径を通過して睾丸に行く動脈がねじられ(ちょうど雑巾を絞るときのようになり)血液が遮断されます。放置しておくと睾丸が酸素不足になり壊死(組織が死ぬ事)します。発症してから6時間以内に手術でもとにもどさなくてはいけません。しかも睾丸回転症はしばしば夜寝ているときに起ります。もし思春期の青年が急に睾丸が腫れ痛くなったら、夜でも昼でもかまわず急いで泌尿器科の受診を薦めます。
 
 同じように急に睾丸がはれ痛くなる病気で“急性副睾丸炎”という病気があります。副睾丸という臓器は陰嚢の中で睾丸の隣にはりついています。精巣の中で精子が完成するのに74日かかると言われていますが、睾丸でできた精子は副睾丸を通過する事によって完熟し、精管を通って精嚢腺にたくわえられ、出番が来ると発射されます。何週間も発射されない精子は副睾丸で吸収されるとも言われています。尿道の細菌が精管から逆流してきて副睾丸に炎症を起こすと副睾丸が腫れるのですが、素人目には睾丸が腫れたように映ります。抗生物質をのまないと治りません。若者ではSTD、壮年以後では前立腺の病気が原因となる場合があります。原因の治療をしないと再発します。

 赤ちゃんから年寄りまで全年齢を通じて、睾丸が少しづつ大きくなってきて、しかも硬い場合は睾丸腫瘍の可能性があります。睾丸に腫瘍ができることを知らない人が多く、手遅れだった人もたくさんいます。高校の授業の中にもう少し身体や病気の知識が入っていればと常々思っています。

うめやま医院 高崎市 泌尿器科