私は小さい頃おねしょをしていました。もう大丈夫だと思っていた小学生の時、祖父母に連れて行ってもらった奥日光の温泉宿でやってしまい、コタツで必死で乾かした記憶は鮮明です。
“おねしょ”のことを専門用語で“夜尿症”と言います。新生児の膀胱は尿が溜まったら縮むという単純な反射で排尿しています。成長につれ尿が溜まっても我慢できるようになります(排尿反射の中枢による抑制)。そして生まれてから4-5年で“膀胱に尿が溜まった”という指令が、大脳の中でいくつもの神経回路を介して“起きろ”と言う指令に変えられます。この成長過程にはかなり個人差があるので、遅れた子は治るまでの間、夜尿症となります。夜尿は睡眠中に作られた尿が膀胱容量を上回りそれでも覚醒しないときに起る現象です。
夜尿症の原因について不明な点も多いのですが、現在考えられる原因として
① 膀胱容量の減少
② 膀胱充満に伴う覚醒の障害
③ 夜間尿量の増加
④ 膀胱や尿管の機能や形の異常
⑤ 精神的要因 などがあげられます。
また多くの場合これらが重なり合っておきています。
① 膀胱型:日中の頻尿、尿意切迫などの症状を伴う事が多いようです。日本人の一回排尿量の最大値の目安として4~7歳で120-150ml、8~9歳で250ml、10~14歳で280-300mlと言う調査結果があります。
② 覚醒障害型:睡眠中に膀胱容量と脳波をいっしょに計ると、膀胱が一杯になっても脳波に変化の現れない子がいます。神経回路の成長過程と想像されます。
③ 尿量調節のひとつに抗利尿ホルモンの作用があります。普通は夜間抗利尿ホルモン分泌が日中に比べて増加し、それで夜間の尿量は減少します。このホルモンが夜間になってもあまり分泌されないために夜間多尿となりおねしょをしてしまうタイプです。早朝尿の密度(浸透圧)を調べる事によって診断できます。
④ 昼間もお漏らしをしたり、あまりにも症状が強い場合は疑ってみる必要があります。
⑤ いったん治まったおねしょが再発してしまう場合です。新学期のクラス変えや弟の誕生など子供でもストレスとなる事があります。
ではどうしたらよいか。
* 5歳でも6歳でも昼間のお漏らしが無ければあせらなくてよろしい。いつか必ず治ります。
*小学校に行っても治らなければ原因を考える。夜尿症には遺伝的要素が強い。片親が夜尿症だった場合その子供の44%が夜尿を有し、両親とも夜尿だった場合77%が夜尿を有すと言う。(両親とも夜尿で無い場合15%の発症)しかも親の治癒年齢と子供の夜尿治癒年齢がほぼ一致する。という報告もある。
*子供を叱ってはいけない。母親がピリピリしただけでも子供は微妙な雰囲気を感じ取っておどおどしたり情緒不安定になる。
*膀胱型なら膀胱訓練(尿を貯めて膀胱容量を大きくする練習)を始める。
オムツパンツはあまりよくない。おねしょマットのほうが本人が自覚すると言う点でよいのではないか。宿泊を伴う行事の予定があれば医者へ行って早めに相談したほうがよいでしょう。