腎臓は背中側で臍よりも少し高い位置で左右1個ずつ、背骨の両脇にあります。腎臓の役目は尿を作って身体から老廃物を捨てる事、水分や塩分の調節をする事、造血ホルモンを分泌する事です。
腎臓は長さ10~12cm位のそら豆型をしていて内部は血管が密に錯綜しています。血管はだんだん細くなりその先は糸くずを丸めたよう(糸球体と言う)になっています。
この血管の中を血液が通過する間に老廃物が血管の壁のすき間から濾されて尿となって腎盂に集まって尿管に流れます。
“腎炎”という病気は炎症のためにこの血管の壁の隙間が広がったり、血管の内部が詰まったりします。壁の隙間が広がるとそこから蛋白の分子や血液細胞がこぼれて尿に混ざってきます。そのために尿中に蛋白や赤血球が出てきます。炎症がひどくなればもれ出る赤血球や蛋白の量も増加します。血管の内部が詰まると通過する血液量が減少するためにろ過効率が低下し老廃物も血液中に溜まってきます。血液検査の中で“尿素窒素”と“クレアチニン”という項目があります。この2つが老廃物の代表で腎機能の指標となります。尿素窒素は食事でとったたんぱく質や身体内の蛋白質が分解された最終産物です。クレアチニンは筋肉を作っているたんぱく質で、筋肉の新陳代謝により老廃物質として血液中に溜まります。これらの数値が高くなっている時は腎機能の低下が考えられます。腎炎の治療というのは血管の内部が詰まらないようにするために血液をさらさらさせるような薬が使われます。
腎臓の機能はかなり予備能力があります。事故や病気で腎臓を摘出しても反対側の1個が残ってれば大丈夫です。腎機能が低下して腎不全(尿毒症)になると腎臓から塩分や水分、老廃物が捨てられなくなるのでむくんだり、貧血のため顔色が悪くなったり、心臓に負担がかかって疲れやすくなります。
“腎盂腎炎”という病気は言葉は似ていますが“腎炎”とは違います。“腎炎”は腎臓の血管の壁の炎症で正式名は“慢性糸球体腎炎”と言います。“腎盂腎炎”は腎盂という尿の集まる場所の細菌による炎症です。原因の多くは膀胱炎の菌が尿管を遡って腎盂にまで到達したために起きます。腎盂腎炎は細菌が原因のために高熱(38~39℃)、悪寒、背部痛などの症状があります。腎盂腎炎の治療薬は細菌を殺すための抗生物質です。腎盂腎炎は症状が激しいもののきちんと治療すれば腎機能の低下を起こすことはありません。腎盂腎炎を起こす原因には膀胱炎の他に尿管結石、膀胱尿管逆流症などがあります。“膀胱尿管逆流症”は生まれつきの異常で尿管から膀胱に移行する部分の弁構造が弱いために膀胱がいっぱいになって排尿するとき膀胱の収縮によって尿が尿管や腎盂まで逆流する病気です。先天性の異常ですから1、2歳の頃から小学生の頃までしばしば腎盂腎炎を起こします。高い熱が出ても子供は自分で症状を言うことができません。尿検査をしていなければ風邪による発熱ということになって見過ごされてしまいます。中学生や高校生になって見つかったときには手遅れで腎盂腎炎を繰り返したために慢性化し腎機能がずいぶんと低下してしまうこともあります。小さい頃に高熱を繰り返す時や咳や鼻水も無く(風邪症状も無いのに)高熱があるときには一度膀胱尿管逆流による腎盂腎炎を疑ってみる必要があります。