古く日本では女性の方が立場が強かったと言う話です。つまり男は一度すれば次にするまでに何分か、何時間か、何日かの休養が肉体的にも精神的にも必要なのに対して、女は何度でも健康であれば肉体の限りつづけることができたからだという話です。ところで、アメリカではたたなくなると離婚と言う夫婦がたくさんあるそうです。そのためバイアグラの事を“夫婦円満の薬”という人もいます。またある人はライオンになる薬とも言いました。では何故男は立たなくなるのでしょうか?
陰茎は海綿体というスポンジのような柔らかな組識でできています。そしてその海綿体の周りをはくまく白膜と言う丈夫な膜が包んでいます。ウインナーに例えれば皮が白膜、肉が海綿体です。ここに動脈から血液が送り込まれ、静脈から出て行きます。いつもは動脈から入る血液と静脈から出て行く血液の量が等しいため同じ大きさですが、動脈から入る血液が出て行く血液より多くなると陰茎はだんだん膨らんできます。勃起しても陰茎には血液が絶えず流れつづけています。だから暖かいのです。そして動脈の太さを調節しているのが自律神経です。したがって勃起しない場合は神経か動脈か静脈か男性ホルモンなどのどれかに問題が考えられます。
かつて勃起しない状態のことをインポといいましたが最近はED(erectile dysfunction)と言います。EDで一番多い原因は精神的なものです。過度の緊張、不安、自信喪失などが原因となって交感神経の緊張が持続していると動脈は拡張しません。仕事や家庭でのストレスも EDの原因となります。
AとBの2匹の雄鼠をガラスの囲いの中に入れて隣同士で飼育します。Aの鼠の床には時々電気を通じて電気ショックを与えます。Bの鼠は電気ショックは無いのですが隣の鼠が飛び上がるのを見て、いつ自分にくるのだろうかといつも脅えています。1週間後2匹とも檻から解放し雌鼠といっしょにします。Aの鼠には性行動が現れるのに対しBの鼠はなかなか性行動をとりません。この動物実験から言えることは肉体的なストレスより精神的なストレスの方がEDに強く関わっているということです。中年を過ぎたらいくつかの肉体的要因を解決する必要があります。コレステロール高値の人や糖尿病の人などでは動脈硬化のため血液の流れが悪くなっています。タバコなどもニコチン作用により血管が収縮するので勃起力は落ちてきます。神経に原因がある場合もあります。糖尿病による末梢神経障害や下腹の手術後などの場合です。静脈に原因があるのは比較的稀なケースです。その他の要因としてはホルモンの異常や薬剤の副作用などが考えられます。
バイアグラは何故効くかと言いますとペニスに行く動脈を拡張させるからです。ペニスの動脈は神経の刺激を受けるとその血管壁からNO(一酸化窒素)が放出され血管が拡張します。バイアグラはこのNOの分解を遅らせる作用があり動脈の拡張が長く続くのです。そのため勃起力が強くかつ勃起の持続時間が長くなるのです。しかしながら全身の小動脈も拡張するので、心臓病をしたことがある人や心電図で異常のある人は血圧が極端に下がり危険な事があります。うわさばかりが先行していますが、健康ならばきちんと診断してから使えば安全な薬です。