“むくみ”とは身体の細胞と細胞の間に必要以上に水分が貯まった状態の事をいう。専門用語では“浮腫”という。水をどんなにたくさん飲んでも健康な人なら腎臓からどんどん排出されてしまうのでむくむことはない。
 さて人間の身体の60%は水分でできている。この水分には0.9%の塩分が含まれて常に一定の濃度となっている。塩分濃度が一定でないと各細胞は正常な機能を果たせないからだ。塩辛い物を食べたあと水が飲みたくなるのは身体の塩分が濃くなったためにそれを薄めようとして脳が水を要求しているからである。この身体の塩分と水分を調節するのは腎臓である。腎臓は水をたくさんとれば塩分の薄い尿として水分をより多く排泄し、汗をびっしょりかけば、尿量はぐっと少なくなって身体の脱水を防ぐようにできている。むくんだ時にはこの腎臓の機能が低下している場合が考えられる。
 動脈は細胞に栄養と酸素を運び、静脈は細胞から老廃物と二酸化酸素を水に溶かした状態で運び去る。静脈圧が高くなると細胞から水が静脈に移行しない。この場合もむくむことになる。静脈圧が高くなる病気、つまり心臓のポンプ機能がおとろえた場合(心臓病)や、静脈がつまったとき(静脈血栓症)が考えられる。むくみの他に呼吸困難を感じる時などは心不全の徴候であるから要注意である。片足だけがむくむ時は血栓症や血管を圧迫する何か(リンパ腺腫脹など)を考えなくてはいけない。
 身体の塩分が一定であるのは先に述べたとおりであるが、血液中の蛋白濃度も一定となっている。血液中の蛋白濃度が低下すると、血管中に水分を保持する力(浸透圧)が弱くなり、血管壁の小さい孔を通して水分が血管外へ漏出してしまう。この場合もむくむこととなる。血液中の蛋白が低下する状態は栄養不良と肝機能低下である。肝臓は身体の工場といわれ、摂取した食品中の栄養物から身体に必要な蛋白質を合成している。肝硬変などではこの蛋白合成能が落ちてしまう。肝臓が硬くなるので腸から肝臓に行く血管の圧力が亢進するため(門脈圧亢進症)腸管の血管から血液が漏出し腹水が貯まることもある。特殊なむくみとして甲状腺機能低下症がある。全身倦怠などの症状を伴うことが多い。
 身体の臓器が全く異常ないのにむくむことがある。女性に多く、生理に関係することも多い。人によっては週に3kgも体重が増えてしまうこともある。これを特発性浮腫という。いまだ原因不明ではあるが難病ではないからご安心あれ。
薬の副作用でむくむこともある。風邪薬や鎮痛解熱剤などが多い。一時的に薬により腎臓の血液流量が落ちることが原因である。
 
 むくみの場所としては顔面とすね(足)がわかりやすい。顔(特に目の周囲)は身体の他の部位に比べて皮下組織がゆったりとしているので水が貯まりやすく、また足に多いのは重力の関係で下の方が水が貯まりやすいからである。長期臥床の場合、背中や脇腹、陰嚢などが目立つ。気をつけなくてはいけないのは内臓もむくんでいる場合である。身体の中で一番水が溜まりやすいのは柔らかい臓器、つまり肺である。この時は肺水腫といって呼吸困難があらわれる。
むくんだから急に病気になったというわけではないが今までむくまなかった人が急にむくみ出したら大人も子供も医者にいった方がよい。

うめやま医院 高崎市 泌尿器科