米国に海外出張していた友人が帰国してきた。
会社の部下が肺炎になり1週間入院したら300万円かかったそうだ。会社負担で済んだそうだが、米国で病気になるととんでもない高額が請求される。脳卒中や心筋梗塞でICUに入れば1週間で退院しても1000万~2000万円、保険に入っていなければ破産してしまう。
 

米国の医療制度について考えてみたいと思う。

 米国の病院システムは日本と大きく違う。病院の機能は救急外来と入院である。外来は契約している開業医が診察室を借りて行っている。検査や手術が必要であれば病院の設備を借りて自分の患者を入院させて行う。病院と契約している開業医は午前中は自分の診療所で一日10人程度の患者を診て、午後は病院に行き外来診療や入院患者の回診、手術などを行っている。米国の臨床医の大部分は開業医で、病院から給料をもらって診療を行っている医師は、救急医とインターンとその指導医などである。
 
 米国の医療は自由診療が基本であり皆保険ではない。公的保険には高齢者向けのメディケア、低所得者向けのメディケイドなどで3割の国民をカバーしている。残りの人々は民間保険に加入しているがその多くは雇用主(会社)が加入するもので財政に余裕のない企業や個人経営者などは保険に入れない。そこに勤務する人々は無保険となる。保険に入っていても会社が倒産すれば無保険となる。15%の人は保険に加入していない。
 
 病気になると保険会社から指定されたかかりつけ医に行き必要ならばかかりつけ医が指定する専門医を受診する。一般の民間保険では自分で医師や病院を選ぶことが出来ない。低額の保険料(3-4万/月)で契約すれば外来診察は1年に3回まで、小手術は可能だが入院費は保証されない等と制約がある。保険会社は家庭医や専門医を指定することにより、医師の検査や手術を制限したり、診療報酬を値切ることができる。医師も保険会社の顔色をうかがいながら患者の薬や手術を決めることになる。家庭医は専門医への紹介率を下げるよう制約を受けたり、患者の検査について保険会社と交渉が必要である。担当する保険会社の事務員は4件に1件は却下するなどのノルマが会社から与えられる。患者が自由に医者や病院を選ぶには出来高払い制(保険会社が全額支払う型)の保険に入らなければならないが、それはあまりにも高額である。無保険者は慈善団体などの経営する救急外来に受診するが、病院での診察順位を下げられてしまったり(保険加入者が優先)拒絶されることもある。ある患者が腹痛で大学の救急病院を受診したが、3時間たっても医者が来なかった。米国の一人当たり年間医療費は88万円、日本は32万円で2.5倍もかかっている。それなのに多くの米国民は自分の希望する医師や病院にかかることができないし多額の保険料を負担しているのである。何故かというと、保険会社が多額の利益を追求している(日本は公的保険であり利益を上げる必要が無い)こと、医療に無駄が多いことに原因がある。米国でおなかが痛くなれば、まず家庭医に行きそこからレントゲン専門医と内視鏡専門医を紹介され、再び家庭医にもどり、手術の必要があれば消化器外科の専門医に紹介され手術を受ける。糖尿病や、心臓病があれば手術前に専門医に廻され、手術可能の是非を判断してもらわなければならない。日本なら一つの病院で完結している。TPPは日本の医療制度に影響を及ぼす可能性がある。