A子さんは夕方スーパーに行くと“今日は新鮮なサバが入ってるよ”とすすめられ1匹丸ごと買ってきて家で料理しました。

 内陸の群馬では新鮮なサバはめったにお目にかかれません。せっかくだからと軽く酢でしめてお刺身にしました。ご主人はそのサバで晩酌に日本酒を2合ほどいただきほろ酔い気分で布団に入りました。夜半を過ぎたころ、夫は突然の激しい胃のケイレン様の痛みとともに嘔吐が始まりました。吐物は胃液だけです。
食中毒になるようなものは食べていないし…..、とにかく救急車を呼んで病院に行き症状を話しました。一晩入院し翌朝一番で胃内視鏡をしました。内視鏡を見て医師は“ア!こいつが原因だ”とテレビモニターを見せてくれました。そこには胃の粘膜に入り込んだ白くて、くねくね動くミミズのような生物が映っていました。鉗子を入れてそれを引っ張り出して胃カメラは終了です。その日のお昼には胃の痛みはすっきり治ってご主人は無事退院となりました。
 
 ご主人の胃の激痛の原因はアニサキスと言ってサバなどの青魚、サケ、マス、タラ、イカなどに寄生する虫です。普段は腸の中に寄生していますが、釣り上げられた後に魚が死ぬと腸から肉や皮の下の部分に移動します。新鮮な魚やイカを刺身で食すときに紛れ込んでいるのを知らずに食べてしまうと数時間後に激しい痛みで発症します。人体内で生存できる期間は3日間です。3日我慢できればアニサキスは死亡し痛みは改善しますが、我慢できなくて病院へ駆け込む場合がほとんどです。病院では食べた食事の内容が診断の手掛かりとなります。予防するには、魚を調理するときに内臓をよく取り除き身を切る時に虫がいないかどうかを確認することです。身の中にいる時は小さな袋に入ってとぐろを巻いています。―20度で冷凍するとアニサキスは死滅するので、中心部まで冷凍されている魚やイカでは心配ありません。また、加熱すれば死亡しますが、酢でしめても完全には殺すことはできません。釣ってきた魚を家庭で調理する時に注意が必要です。釣った魚は早くに内臓と頭を取り除く、刺身は薄切りにする、肉眼でよく見るなどの注意が必要です。魚をさばいた時に内臓にアニサキスがいたら身にも潜んでいる危険が大です。
 
 

アニサキスは1㎝~4㎝程の白色もしくは半透明の線状虫です。

本来はイルカやクジラの回虫でその腸に寄生しています。イルカやクジラの便に混じって卵が排泄され、オキアミなどが食べ、さらにそれを魚が食べその魚の腸の中で幼虫のアニサキスとなります。その魚をイルカやクジラが食べてイルカやクジラの腸の中で成虫となります。したがってアニサキスがいるのはクジラと同じ海域に住む魚やイカなどです。オコゼやヒラメにはアニサキスはいません。アニサキスは人間の腸では成長できないために苦し紛れに胃や腸の壁に突入し痛みを発症します。刺身を食べる日本人は覚えておいた方が良い病名です。