女性は男性よりも尿道が短く、前立腺が無いために構造的に尿失禁が起こりやすくなっています。
最近、尿失禁で悩む女性が増えています。誰にも相談できずに独りで苦しんでいる方も多いようです。
症状がひどくなれば毎日の外出も億劫になり、買い物に出かけてもまずトイレがどこにあるか心配しなくてはなりません。友達に旅行に誘われても断ってしまう方も多いようです。
統計では30代では20%、40代では30%、50代以上では40%~50%の方でなんらかの尿失禁を経験しています。
そもそも正常な排尿とはなんでしょうか?
人は普通300~400mlの尿を溜めることができます。蓄尿時には膀胱の筋肉は伸びますが、出口を取り囲む括約筋は締まる様に大脳によって指令されます。
膀胱の拡がりが悪くなって蓄尿量が少なくなるか出口の締りが悪くなった時に尿失禁が起こります。
女性は男性よりも尿道が短く、前立腺が無いために構造的に尿失禁が起こりやすくなっています。
尿失禁は以下の3タイプに分かれます。
- 腹圧性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 溢流性尿失禁(いつりゅう)
腹圧性尿失禁
咳、くしゃみ、縄跳び、階段を下りるときなどお腹に力がはいった時にちょっと漏れる状態です。
骨盤底の筋力が低下したり、膀胱と尿道の角度が変化したことにより腹圧が直接膀胱から尿道出口にかかることにより生じます。出産の回数が多いほど、出生時体重が大きいほど(子供が大きいほど)筋肉がゆるむので腹圧性尿失禁になりやすくなります。
治療は骨盤底筋体操と言って尿道出口周囲の括約筋を鍛える体操が有効です。
尿道出口周囲の筋肉といっても意識することが難しいのですが、この筋肉は肛門、膣、尿道を一緒に囲んでいるので肛門を締める訓練をするといっしょに尿道周囲括約筋も締まります。
...ではやってみましょう。
イスに座って背筋を伸ばしてください。
肛門を締め息を吸いながら締めた肛門をお臍の方に近づけます。近づけたらそのまま5秒数えて…緩めます。これを10回ほどしてみましょう。
どうでしょう?やり方はわかりましたか?
これを一日3回、1~2ヶ月やれば必ずよくなります。内服治療や手術もありますが、まずは骨盤底筋体操が基本です。
切迫性尿失禁
尿意を感じるとトイレへ行くまでに我慢しきれず漏らしてしまう状態です。頻尿を伴うことも多く膀胱過敏になっています。
早め早めにトイレへ行く習慣ができてしまい、膀胱容量が減少するためにさらに頻尿傾向となります。
このタイプを最近は“過敏性膀胱”とも呼んでいます。
治療は膀胱の筋肉を弛緩させ膀胱容量を増やし、膀胱過敏状態を取り除きます。
自分で尿を溜める練習(蓄尿訓練)や内服薬にて治療します。
治療に先立って膀胱の疾患、ポリープや結石、慢性炎症などが無いか確認する必要があります。
溢流性尿失禁
膀胱に尿がたまりすぎてあふれた分が尿道からチョロチョロ漏れる状態です。
糖尿病や脳卒中などの後の神経因性膀胱で膀胱の筋肉の収縮力が無くなった時や、前立腺肥大が進んだ時に起こります。
テレビのコマーシャルなどでも尿もれに関するものが多くなっていますがそれを買う前に、まず骨盤底筋体操や蓄尿訓練を始めてみてはいかがでしょうか。
ずっと効果的です。