“風邪”

 “風邪”と診断して薬を出した後、患者さんから「先生!早く治るように注射をお願いします!」と言われることがあります。気持ちはよーくわかります。その昔、今から30年以上も前でしょうか、多くの病院で解熱剤の注射をよくしていました。「メチロン」という薬です。一発で解熱して、気分がすごく楽になります。一汗かいた後には食欲も出てきます。でも効果は数時間です。夜にはまた39℃の発熱です。でも2-3日すると風邪は自然の力で治ります。患者さんは思います。「注射をしたから早く治った!」と。メチロンはピリン系で副作用の多い薬です。注射をした後に血圧が下がってひっくり返ったり、ショックになったり、亡くなった方もいました。

 医者は解熱効果を認めるもののその副作用の重篤さから今ではほとんど使わなくなりました。でも注射神話は残っています。「抗生物質をお願いします。」とも言われます。風邪は本来ウイルス感染症です。抗生物質は細菌には効果がありますがウイルスには効果がありません。むしろ抗生物質の乱用で耐性菌を増やすだけです。肝機能障害や薬疹などで苦しむ事もあります。万が一を避けるためにも必要な時以外は余分な処方しないで済ませたいと考えています。ある医者で抗生物質を飲んだら治ったとします。それは抗生物質を飲んだからではなくて、たまたま治る時期が来ていたので治っただけかもしれないのです。
 
 風邪はネギ食べて早く寝れば治るという話もまんざら嘘ではありません。風邪には根本的な治療薬はありません。いわゆる風邪薬は症状を緩和する役目はありますがウイルスを殺す効能はありません。十分な休養と栄養が何より大切です。

 
  

便秘

 排便習慣は人様々です。一日に2~3回の人から1週間に1回の人もいます。でも他人の様子は知りません。だから、1日に1回は排便しないと異常だと考えている人が少なくありません。便が出ないと下剤を飲みます。下剤をかけ過ぎると大腸は空っぽになってしまい2~3日は排便がありません。排便が無いからまた下剤をかけます。空っぽの腸に下剤をかける。でも出ない!ノイローゼになってしまいます。どんどん痩せていきます。便の出方は人それぞれです。毎日出なくても異常ではないと理解してください。

 そもそも便秘とは、糞便が大腸に長く停滞するために便の水分量が減り、体積が減少、硬くなった状態です。排便困難や、残便感などの症状や、腸内容の発酵が進みガスが発生し腹痛や腹部の張り感と言った症状が出ます。便が3~4日でなくても自分が苦痛でなければ便秘と考えなくてもよいでしょう。

 朝ごはんを食べると大便がしたくなると思いませんか?朝ごはんを食べると胃に食物が入ったことが刺激となって腸が動き出します。S状結腸から直腸に便が移動し直腸粘膜を刺激し便意が生じます。直腸の蠕動運動が起こり肛門が緩みます(排便反射)。朝ごはんの後の便意を我慢すると排便反射が減少し便意を催さないようになってしまい習慣性便秘の原因となります。朝食の後の便意を大切にして排便する習慣をつけましょう。理屈では昼飯や夕飯でも同様に便意を起こしますが、空腹の後の朝食が一番刺激が大きくなります。
 コーラックや浣腸などで腸に刺激を与え続けていると直腸の神経が鈍くなって便意を無くしてしまいます。あまり薬に頼らない排便習慣を造ることが大切です。ただし、急に便秘になってきたときは大腸の病気の事があるので医者に相談してください。  
 
 

おまけの話です…….

  肛門粘膜が刺激を受けると直腸の収縮が起こり排便運動が起こります。ウォシュレットをするとまた排便したくなるのはそのためです。
  
  

うめやま医院 高崎市 泌尿器科