アフリカの赤道直下の国タンザニアに“ハッザ族”
と言われる人々が住んでいます。東京都の2倍の広さの地域に1000人ほどが暮らしているそうです。彼らは狩猟採集民族です。毎日の食料は弓矢で獣や鳥を狩り、木の実やイモなどを採って食べます。はちみつやヒヒは彼らにとってごちそうです。彼らの食べる食物は800種類、我々よりはるかにたくさんのものを食べています。獲物がなくなると集団で引越しします。荷物は、水を入れるポリタンク、鍋、弓、少量の衣類と敷毛皮、保存食(バオバブの実)などで一人で担げる大きさです。家は木の枝と草で作り、1日数時間の狩猟で食物を確保し残りの時間はおしゃべりをしたり昼寝をしたり思い思いの時間を過ごしています。誰にも命令しないし誰からも命令されません。シャツやショートパンツに隠れた胸や尻には、狩りの時にヒョウに咬まれたり灌木の棘や木から落ちたりしてできた傷があり、彼らの長年の生活を物語っています。
ところで彼らの中で、もてる男の条件はというと、1が狩りの腕前、2が性格…. 。なんか現代人と変わりありません。一定期間焚火のそばで一緒に寝ていたカップルが自然と一緒になるようで、婚姻にあたっての条件はヒヒを5匹、妻の両親にささげることです。一夫一婦制ですが、男も女も数年すると相手を替えていることが多く、狩りが下手であるとか、妻を大事にしないからとかの理由で女性から離れていくことが多いのだとか。女性も別の集団に移って暮らすので全く問題ないそうです。
彼らの暮しには電気がありません。
夜は月明かりと焚火の明るさだけです。冷蔵庫もテレビもパソコンもありません。本もありません。情報の伝達は話だけ。弓の使い方、矢の造り方、獲物の捕り方、怪我をした時の薬草の塗り方、…など、知恵を子供たちに伝え続け何千年と言う歴史の中で生活を守ってきました。狩猟民族であるがゆえに、畑や家などの不動産を持ちません。自分の暮しも他人の暮しも皆同じで格差が無い社会です。
昔人類の99%は狩猟民族でした。農耕や牧畜が始まり定住するようになりました。人口が増え新たな土地が必要になり財産ができる一方で借金も生まれました。土地をめぐって争いが始まり、文明の発展とともに汚染や疫病が流行り、略奪や戦争をするようになりました。はたして文明とは人類に幸福をもたらしているのでしょうか。
ハッザの人々暮らしを知ったのは昨年のNHKのテレビ番組でした。5家族20人ほどが集団で生活をしていました。子供に「今何歳?」と尋ねるシーンがありました。
親は何歳なんてそんなものは知らないよ。と答えていました。彼らには暦がありません。だから生まれた日も生まれた年もわからないのです。彼らの言葉にあるのは今日、明日、明後日までです。1週間も1年後もありません。彼らの人生に明日の予定はありません。明日も今日と同じ生活をするだけです。1週間後も1年後も…..同じ繰り返しです。今までずっとそうだったように。だから、これから先のことを考えて悩むことはありません。将来のことを考えて余分な事まで悩み心配している私たちの生活とはずいぶんとかけ離れています。文明の利器も財産も何も持たず、何時ライオンに襲われるかもしれない彼らの暮しですが、過去や未来にとらわれず、自分の人生に素直に向き合う生き方をみると、我々も誕生日を迎えた時にまた歳をとってしまったと嘆いてはいられません。