夏になると新聞やテレビで蜂に刺されて死亡する人の話を聞きます。毎年30人以上の人が犠牲になっています。蜂に刺されて死亡するのは蜂の毒が直接の原因ではありません。蜂の毒に対して人間の身体がアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こし、血圧が下がったり呼吸困難を起こすためです。適切な処置が遅れると死亡します。刺傷事故は7,8,9月に集中しています。
人を刺す蜂はスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチです。これらの蜂は社会性ハチといって集団生活を送っています。集団生活(巣)を守るために近づくものに攻撃してきます。単独生活を送る非社会性のハチは攻撃してきません。3種の蜂の中でもっとも攻撃的なのがスズメバチです。蜂の毒針は産卵管が発達したものなので刺すのはメスだけです。ミツバチは毒針に逆トゲ(釣り針の返しのようなもの)があるので刺すと毒針がその場に残ります。スズメバチは返しがないので何度でも刺します。
前年の秋に誕生し越冬した女王蜂は4-6月にかけて一匹で巣を作り始めます。6-7月にかけて働き蜂が羽化すると女王蜂は産卵に専念するので巣は急速に大きくなります。蜂の数も巣の大きさも防衛本能も8-9月頃が最大になります。そのためこの時期に蜂に刺される危険が最も高いのです。新女王の羽化時期(10-11月)になると巣から出てくる新女王と交尾するために多数のオスが巣の出口付近を飛び回っています。交尾を終えた新女王は朽ちた木や土の中で越冬します。古くなった巣は翌年は使われません。
オオスズメバチは土中に巣を作ります。そのため近くを通行すると振動が巣に伝わり、蜂が興奮して攻撃してくることがあります。キイロスズメバチは軒下、天井裏、床下、雨戸扉の中、などに営巣します。活動期間は長く5-11月までです。攻撃性、威嚇性ともに強く近づいただけで被害に会うことがあります。都市部で多発して問題になっているのがコガタスズメバチです。コガタスズメバチは80%が樹木に、20%が家屋に巣を作ります。樹木の種類は多様ですが、サザンカ、ツツジ、ツバキ、キンモクセイなど生垣や庭木に多く利用される木が多いのが特徴です。剪定作業中などにしばしば刺傷被害が出ています。
では蜂に刺されないためにはどうしたらよいでしょうか?集団生活をする蜂は外敵から巣を守るため攻撃性が発達しています。蜂がまわりを飛んでいたらそのそばに巣があると思ってゆっくり後ろに下がることをお勧めします。手で払えば確実に刺されます。巣から離れて餌集めなどをしている時は蜂のほうから攻撃してくることはありません。車の中に蜂がいても窓を開けてそっと逃がしてやれば大丈夫です。洗濯物の取り込みなどにもまぎれこんでいないか注意が必要です。
蜂に刺されて気分が悪くなったり、息苦しくなったりしたらどうしたらよいでしょうか?アナフィラキシーショックの可能性があります。医療機関へ急いで下さい。これは実際に沼田市であった話ですが、母が蜂に刺されて気分が悪くなったため、母を助手席に乗せて娘は昼間ですがヘッドランプを遠目でつけっぱなしにして、しかもクラクションを鳴らせっぱなしで信号無視して山から病院へ連れて行ったそうです。その母は危ないところで助かりました。