誕生日や新年になると、「また歳を取ってしまった」と悲観的になる年代もありますが、「今年も無事迎えることができた。ありがたいことだ。」そんな心境の方も多いのではないでしょうか。年をとるにつれて健康のありがたさをしみじみと感じざるを得なくなります。
 
 当院は開院して今年で23年目になります。患者さんとともに自分も年をとっているので、歳を感じることは少ないのですが、昔は小学生として通っていた子が成人して結婚し、今や母親になって子を連れで来院する時など歳月の流れを感じます。
 
 現在私は二つの老人ホームの嘱託として多い時で毎月80人程を往診していました。病気や家庭環境から在宅での生活が困難になった方々です。その老人ホームは看護師が24時間常駐し夜でもすぐ駆けつけてくれます。おむつの世話から喀痰の吸引、発熱や転倒時など何でも対応してくれます。患者さんにとってはとても心強い施設です。そんな整った環境からか、近隣の病院から紹介された胃瘻や経管栄養、経静脈栄養、在宅酸素、寝たきりなど重症の方もたくさん入居しています。私より年若い50代の方も入居しているので、私も老人ホームへの入居という事が他人事ではなく感じます。
 
 入居の原因となった疾患は脳卒中が一番多くて80人中36名(45%です)。脳出血が14人、脳梗塞22人です。次に多いのが認知症22人(25%)です。がん7人、心疾患5人、骨折後4人です。認知症、がん、心臓病以外の原因はひょっとしたら予防できていた可能性があります。脳卒中の原因は、高血圧、糖尿病、高脂血症(コレステロール高値)です。日常診療で頻回に遭遇する病気であり、これらで通院している方がたくさんいます。そういった方々でどの位の人が治療が改善しているか考えた時に、高血圧の人で2割、糖尿病で4割、高脂血症で2割の方々が十分な状態とはいえません。

 高血圧や高脂血症の方の不十分な治療の原因は、主に内服薬の自己中止や塩分、脂肪分の摂りすぎです。糖尿病の方の不十分な治療の原因は運動不足、カロリー過剰、食事の不規則、飲酒、肥満の持続などです。脳出血や脳梗塞の発病前までは元気な状態ですから、自覚症状はありません。
 
 

なってからでは遅い

 ということを皆さんに自覚していただきたいと切に願います。皆さん自身自分のコントロールが悪いことをたぶん自覚されているし、改善しない原因が何処にあるかも知っているはずです。この機会にもう一度考え方を変えてみてはいかがでしょうか。

 現在脳卒中の治療は救急医療の発達で救命率は向上しています。しかし救命された方のなかで半分は寝たきりか車椅子の生活です。寝たきりの生活で5年も10年も暮らすことを考えると予防がいかに大切かがわかると思います。

 転倒や尻もちのために骨折しその後寝たきりにならないように骨粗鬆症の予防も大切です。大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折、手首の骨折は高齢者の3大骨折です。背が縮む、背中が曲がる、60歳以上の女性は骨粗鬆症が始まっている可能性が高いです。カルシウムの補給や定期的な運動で骨を強く、筋肉を鍛えて転びにくくなるように心がけましょう。