犬咬傷

  咬まれたらまず、患部を十分水道水で水洗いします。犬の口の中にはパスツレラ菌という細菌が常在しています。犬にとってパスツレラ菌は常在菌なので菌がいても無症状です。この細菌は人では病原性があり、傷から皮膚の中に入って化膿し、皮膚の下に蜂窩織炎という炎症を起こしやすくなります。蜂窩織炎というのは、傷口の化膿ではなくて傷口から細菌が皮下に深く侵入し炎症が深く広く拡がる炎症です。咬まれた周囲まで赤く腫れあがります。これを予防するには、水洗いだけでは不十分で、抗生物質を内服または点滴する必要があります。傷から破傷風の菌が入り破傷風になる危険もあるので必要によりトキソイドを予防注射します。
 
 狂犬病は発症すると100%の確率で死亡するという恐ろしいウイルス感染症です。感染した犬の唾液中のウイルスが、咬まれた傷から体内に入り神経を介して脳神経組織に到達し発病します。傷口以外に目や唇などをなめられても感染することがあります。狂犬病ウイルスは人、犬を含むすべての哺乳類に感染します。前駆期は風邪症状や咬傷部位の痒みなどですが、急性期には恐水症状や興奮、錯乱などの神経症状が出ます。恐水症状とは、水などの液体を嚥下するときに、嚥下筋が痙攣し強い痛みを感じるために水を極端に恐れる症状のことです。 
 日本では1956年以来発生していません。日本では現在のところ心配はないと考えていますが、外国へ行く方は要注意です。英国、北欧、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾を除いたほぼ全世界で毎年50,000人以上が死亡しています。インドや中国、東南アジアは要注意国に入ります。海外旅行では日本と同じ感覚で現地の動物に手を出さないようにしましょう。もし犬に噛まれたら直ちに水や石鹸水でよく洗い、消毒します。狂犬病ウイルスは弱いウイルスなので多少効果はあるはずです。そして速やかに医療機関に相談してください。

猫ひっかき病

  猫にはバルトネラ菌という細菌が住み着いています。猫に対しては全く病原性がなく無症状ですが、糞便中に排泄された菌が猫の爪に付着しています。猫に引っかかれると、この菌が人間の体内に入り感染します。猫に引っかかれた傷が10日後(1~3週間後)に赤く腫れ、赤い発疹だったり、膿をもっていたり、かさぶた状であったりします。傷の根元に近いリンパ節が腫れます。腕をひっかかれた時には腋の下のリンパ節が、足を受傷すると鼠径リンパ節(足の付け根のリンパ節)が腫大します。顎の下のリンパ節が腫れることもあります。リンパ節は硬く圧痛があります。ほとんどの人で発熱は長く続き(数週間から数か月)、全身倦怠感、食欲減退、頭痛、関節痛、吐き気などの症状を伴うこともあります。猫から猫への感染はのみを介するので、他の猫と接触の多い雄猫や野良猫の方が危険が高いようです。猫の1割ぐらいが保菌しているとみられます。子猫だからと言って安心できません。
 
 リンパ節が腫れて発熱の続く病気は、猫ひっかき病のほかにも、ウイルス感染や細菌感染、リンパのがんや白血病など多種類にわたり、しかも猫に引っかかれたことを本人が忘れている場合などでは診断に苦労する場合も見受けられます。
 
 猫は犬と同様にパスツレラ菌を持っていますので咬まれた時には犬と同様の注意が必要です。よく犬や猫とキスをしている人がいますが感染する危険がありますので注意をしてください。