寒くなるとホッカイロや炬燵が恋しくなります。

大正・昭和の時代にプラチナの触媒作用を利用して気化したベンジンをゆっくり酸化発熱させるカイロがありました。ハッキンカイロと言いました。1978年に「ホカロン」の商品名で使い捨てカイロが発売されました。現在は、シールつき、ミニサイズ、靴中用、肩用、座布団サイズなどたくさんの種類が出回っています。使い捨てカイロは、鉄粉の酸化作用を利用したカイロです。中には発熱体である鉄粉、鉄が錆びるのを促進する水分と食塩、バーミキュライト(水分があってもサラサラ感を保つ保水材)、活性炭(空気層の役目)などが入っています。使用前は真空パックや無酸素包装などで酸素に触れないように密閉されています。使用する時にこれを破り、空気が入って酸化が始まり発熱します。
カイロを使う前によくもんでも発熱スピードは変わりません。袋の空気穴を粒子がふさいで反って発熱が弱くなる原因となります。使い始めに数回振るだけで十分です。また貼るタイプは揉むと中身の粉が片寄って均等な発熱を妨げます。使い捨てカイロは身体が動く(カイロが揉まれる)ことによって空気が出入りし発熱が継続します。食事を暖めておくなどの目的でカイロをただ置いただけでは空気の出入りがないので発熱は止まります。靴下に張るタイプや靴用のカイロは空気の出入りが少ない所で使用するようにできています。これをお腹や背中、肩など違う場所に使用すると空気の供給が十分なために反応が激しくなって高温になり熱傷を起こしてしまうことがあります。

カイロを肌着に貼って下腹を暖めたとします。

「暖かくて気持ちいい」程度ですが、十分にやけどを引き起こします。カイロは本来高温にならないように設定されています。皮膚に直接貼ったら危険なことは理解できると思います。下着の上から貼った場合、皮膚が温められ皮膚の下の毛細血管の血液が温められます。毛細血管の中の血液は絶えず流れるために皮膚温が過剰に上昇することはありません。しかし、ゴムのきつい下着や、ボディに密着する服などを着用した場合、カイロに圧迫され皮下の毛細血管の流れは停滞、遅延し皮膚温が過剰に上昇します。これが数時間続くと低温熱傷を引き起こします。毎年のように下腹にカイロを貼っている人は何年かするとお臍の下が四角く、カイロの大きさで褐色に変色しています。下着をめくってお腹を見たときにお腹が四角く赤くなっていたらそれは危険信号です。貼る時間が長いか、下着のもう1枚上に貼り直すか、窮屈な服を着ていないか検討してください。

夜寝るときに使う電気あんかや湯たんぽ、電気敷き毛布なども同じように低温熱傷の原因になります。

湯たんぽなどタオルでくるんでいても使用中にずれてはみ出したりします。低温熱傷は44℃で6時間接していると発生します。温度が1℃上昇すると皮膚が損傷される時間は半分になるといいます。46℃なら1時間半で熱傷します。低温熱傷で多いのは脚です。身体の中でも脚は知覚が鈍く、血行も悪いためです。麻痺があって寝返りを打てない人、糖尿病や動脈硬化で足の血流が低下している人、泥酔時、睡眠薬使用時、幼少児などはより注意が必要です。低温熱傷は表面上は皮膚の紅斑や、水ぶくれ程度であっても長時間の過熱のために皮下深く組織が損傷(壊死)しています。ちょっとした傷でも治るまでに時間がかかります。ストーブ、ファンヒーターやホットカーペットなど身近な冬の暖房器具を油断しないように。