実は、私は風呂屋のせがれでした。屋号は『梅乃湯』と言ったのですが、その関係で風呂についてはちょっと詳しいのです。小学5年まで私は番台に座っていました。当時の入浴料は28円(今は330円)です。湯上がりにフルーツ牛乳を飲みながら映画のポスターを見て大人社会を垣間見ていました。風呂屋はポスターを貼るとただ券がもらえるのでほとんどの映画を私は無料で見ることができました。端午の節句は菖蒲湯です。つるつるねちねちした茎は青臭い香りで気持ちがいいのですが、葉の先が肌に当たるとチクチクするのでうまく葉をどけながら入らなくてはいけませんでした。冬至は柚子湯です。香りもいいけど体も良く暖まりました。今の日本は便利になってきましたが粋なことをする心の余裕が無くなってきたような気がします。
さて本題ですが
入浴には
①温熱・清浄
②静水圧
③浮力などの物理的作用と
④心理的効果とがあります。
①温熱・清浄効果 冷えを癒し、発汗を促し、血液循環を良くします。さらには皮膚の角質層の柔軟化、毛穴を開く、新陳代謝を高めるなどの効果が あります。肩こりや筋肉痛などでは筋肉の細胞内に貯まった疲労物質(乳酸)を、血液の流れを良くして取り去り、筋肉のこりや腫れを和らげます。にきび、吹出物などでは汗腺に貯まった埃や細菌を取り除きます。温泉ではさらにその成分である重曹や硫黄が石鹸と同じ様に皮膚の脂肪や汗腺、毛穴にある脂肪の汚れを乳化し清浄効果を発揮します。また、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムは皮膚の表面の蛋白質と結合して膜を形成するので、この膜が体熱の放散を防ぎ湯冷めしにくくなります。炭酸ガス成分は皮膚より吸収され皮下の血管を拡張させます。血管が拡張すれば疲れや痛みの物質を筋肉から洗い流す作用も強くなるわけです。
②静水圧作用 入浴すると水圧に押され体はスマートになります。ウエストで3-6cm胸囲は1-3cm小さくなります。胴体や下肢からの血液が心臓に強く押し返され心臓の働きが活発になり全身の血行が良くなります。心臓に負担がかかるので、心臓に持病のある人は体調の悪い時は入浴を控えて下さい。
③浮力作用 浴槽の中で体重は空中の1/10の重さになります。関節や骨、筋肉への負荷が減ります。また水中で手足を動かすと水の抵抗により一層筋力がつきます。腰痛や膝痛の人に水泳やプールでの歩行を薦めるのはこれらの効果を期待しているわけです。腰や膝の周囲の筋肉を鍛えることにより症状の悪化を防ぐことができます。
④風呂は温度によって身体にもたらす効果が変わります。42度以上の熱い湯は交感神経が緊張し血圧が上昇して心臓に負担がかかります。逆に39度以下の温めの湯は副交感神経が優位となり身体も神経もリラックスします。したがってストレス解消や安眠したい時には温い湯にゆっくり浸かるか、熱めの湯に短時間入るのが良く、また、これから一仕事という時には熱い湯に短時間というのが良いようです。肩こりや腰痛を取るには中温で長時間が良いでしょう。