めまいで受診される方が増えています。
東日本大震災の後にはしばらくいつも揺れているような感覚を持った人も多かったのではないでしょうか。地震酔いは、下船病(船から降りた後に生じる身体がよろめき揺れている感覚)や車酔いなどと一緒で身体の加速度や傾きに応じて平衡感覚を維持する前庭器(内耳に存在)の記憶と視覚や体性感覚(筋肉の緊張から自分の姿勢を知る感覚)のミスマッチが原因で発症すると考えられています。
めまいがあるとつい脳梗塞ではないだろうか?
他に脳の病気があるのではないだろうか?などいろいろ心配をしてしまいがちです。めまいの種類は大きく分けて3つに分類されます。回転型、動揺型、失神型です。目が回る、天井が回ると訴えるのは回転型、身体が雲に乗った様でふわふわする、船に揺られた感じがするのは動揺型です。失神型と言うのは立ちくらみのように目の前が暗くなって頭から血が引いた感じ、気を失うなどの場合です。このようにいくつかのタイプがあり、それぞれに特有な原因があります。従って、めまいを訴えて病院に行くときには、何時、どのような状況で、どのようなめまいが、どのくらいの時間続いたか、他に何か症状があったか、と言うことを話していただくと大変参考になります。
回転性のめまいの原因として
一番多いのは良性発作性頭位めまい症です。耳の奥にリンパ液の流れる半円状の管が3本あってそれがつながりあうところに小さな袋があります。この袋の中にある耳石と言う炭酸カルシウムの粒が管の中に転がり落ちることがあります。頭を傾けた時にこの耳石がコロコロと動くために異常なリンパの流れを生じあたかも身体が回転しているかのような発作を起こします。頭を傾けた後数秒してからめまいが起こり30秒くらいで消失するのが特徴です。その他にはメニエール病、前庭神経炎、小脳や脳幹部の梗塞や出血があります。メニエール病は20分以上のめまいが繰り返し起こります。難聴、耳鳴り、耳閉塞感など耳症状を伴います。リンパ流れの不具合で発症します。メニエールはフランス人医師の名前です。発作の誘因としては精神的、肉体的疲労、ストレス、睡眠不足などを機会とすることが多いと言われています。
失神型めまいの原因は3つあります。
急に立ち上がった時に脳に行く血液が不足して(起立性低血圧)一過性の脳貧血になる場合。長風呂、飲酒後、食事後、多量の発汗などでも起こりやすくなります。脳の動脈硬化があって内腔が狭いところに一時的に血栓ができてそれが幸いに直ぐ溶けた場合などで血栓のあった時間だけ、例えば数秒間意識を失うという場合があります。一過性脳虚血発作と言います。脳梗塞の前触れとなる大事なサインです。心臓に不整脈があって脳に血液を送り込めない状態の時にも失神が起こります。
危険なめまいの目安は、
他に神経症状があるかどうかが重要です。複視(ダブって見える=眼球を動かす神経の麻痺)、構音障害(うまく話せない=舌や咽頭を動かす筋肉の麻痺)、顔筋麻痺(顔面神経の麻痺)、嚥下障害などや、手や足の運動麻痺、感覚障害、起立歩行障害などがあるかどうかは大事です。なぜならこれらの神経は脳幹にめまいの神経のそばを通過しているために、ここに出血や梗塞があるとこれらの症状のどれかを伴ってくることが多いからです。逆に言えばこれらの症状が無い場合はあまり心配のないことが多いとも言えます。